住職挨拶

雲西寺第十八代住職 紅楳  三男丸(鳳天)

雲西寺第十八代住職 紅楳 三男丸(鳳天)の写真
雲西寺第十八代住職 紅楳 三男丸(鳳天)の写真

 皆さんようこそ雲西寺のホームページにお越しくださいました。住職は息子に譲り、もう肩書としては前住職なのですが、息子紅楳 聖英(こうばい しょうえい)は教員として働いており、実際のお寺の法務は私、紅楳 鳳天(こうばい ほうてん)が中心的にやっておりますので息子に代わり挨拶させていただきます。

 

 現代の世界においては、排外主義と呼ばれるように自分の国さえよければいいという考え方が蔓延しています。いつ戦争が起き、核兵器が使用されてもおかしくない緊迫した時代です。

 かの天才物理学者アルバート=アインシュタインは、

「現代科学に足りないものがあるとすればそれは仏教でしょう」

という言葉を遺しています。

 自分が生み出した理論が応用され、原子爆弾という人類史上最悪の兵器が生まれてしまった。そして、自国さえよければいいという思いで原爆が広島長崎に投下されました。彼はそのことを悲しんでしばらく表舞台に出なくなります。そんな悲しみの中、彼はこのような言葉を遺したのかもしれません。実際に彼は1972年来日の際に本願寺に寄って僧侶の法話を聞き、涙ぐまれて帰ったそうです。

 人間は、自分さえよければいい、自分が一番かわいいという思いにとらわれています。そして、自分の思い通りにならないと、三毒の煩悩と呼ばれる貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚痴(ぐち)、つまり、むさぼり・いかり・おろかさの心を起こしてしまいます。それが、争いを生み、紛争を生み、今の社会問題の根本にあるのが人間の煩悩であるなあと、アインシュタインも原子爆弾が広島に落とされたときに思ったのかもしれません。

 私たちは命ある限りこの煩悩から逃れることは到底難しいことです。お釈迦様がこの世の命を終えられてから約100年で人々は煩悩から離れて悟りを開くことができなくなりました。

 しかし、法然聖人・親鸞聖人は、お釈迦様の教えの中で、全ての人が救われる浄土真宗のみ教えを伝えてくださいました。その教えとは、阿弥陀如来という仏さまが煩悩から離れられない私たちの姿をご覧になってお慈悲の心を起こし、そんな私たちがお浄土という阿弥陀如来さまの世界に往生し、仏となるためのお徳で仕上げた南無阿弥陀仏というお念仏が完成された、というものでした。煩悩をそなえた全ての命が仏になることのできる唯一の道だとして、親鸞聖人は私たちに御教えを伝えてくださったのです。

 仏のお慈悲の生き方は実践するのは到底難しいものです。けれども、お慈悲の生き方を正しいと仰ぎ、南無阿弥陀仏を称えながら阿弥陀さまのお慈悲に感謝し、すでにご往生されたご先祖様に感謝しながらわが身を振り返る生活を送らせていただきましょう。                                              合掌